AN ILLUSTRATED RECORD (日本語版)

発行インターナショナル・タイムズ
定価3000円+送料240円

この日本語版は1975年10月31日に発行されたもので、色々な雑誌に大々的に宣伝されて通販で売られました。
福田一郎さん推薦のコメントが書かれた広告を目にされた方も多いと思います。

この本は、おそらく通販のみの扱いで店頭での販売はされなかったようです。

LPサイズの大きな本で、当時としてはめずらしい写真も満載で見ているだけでも楽しい本でした。
しかし、この本の本当の魅力はその辛口なコメントに尽きるのではないでしょうか。
特にこういったビートルズ専門書ではビートルズに対して寛大すぎるほどのコメントが書かれた書籍が多い中で
誰も書かなかったであろうビートルズ作品に対するかなり手厳しい評価は刺激的です。





2006.8.25
重厚なビニール・カバーが付いていて豪華な雰囲気の一冊です。

当時は珍しかったサージェント・ペパーの写真を表紙に使っていますが、
LP「サージェント・ペパーズ」のジャケット裏でもそうなんですが
こうやって改めて見てみるとリンゴの手はかなり大きく写っているように見えます。

もちろんカメラ位置がかなり下から撮影しているのも関係していると思いますが。


右の二人が筆者。


ジョンがリバプールの水泳教室で25ヤードを泳ぎきったことを証明する証書。


二重露出になったスチュの写真。






以下は本書からその辛辣なコメントの一部を抜粋しました。



「ラヴ・ミー・ドゥー」

歌詞もポピュラー音楽に最初から付きまとった”涙もろくなる6月”式のステレオタイプな言い回しを超えてはいなかった。



「PS・アイ・ラヴ・ユー」

音楽構成は素晴しく、コードが微妙に移行する構成がこの新しいグループのレパートリーにうまく合うことが証明された。



EP盤「ザ・ビートルズ・ヒッツ」
(このジャケット写真のみ私の所持盤から)

当時、ビートルズの宣伝係をつとめていたトニー・バローはジャケットに次のような興味深いことを記している。


「このEP盤に収められた4曲はレノン&マッカートニー・ソング・ブックから特に選び抜かれたものである。
もし、この記述の仕方がいささか尊大であると感じられる方がいるなら、
私はその人にこのジャケットを10年間保存することをおすすめする。
そして、1973年のなかば頃にそれをコレクションからひっぱり出して、私に悪口の手紙を書いていただきたい。
もっとも、それは1970年代のポップ・ミュージック関係の人間たちが、これら4曲のうち最少2曲について
これはレノン&マッカートニー・ソング・ブックからとられた現代ビート音楽の初期の絶好の例である
というように尊敬をこめて語っていない場合にかぎる。」


このコンパクト盤は、私がまだビートルズのレコードを数枚しか持っていなかった時期に買った1枚だったのですが
裏の英文解説にそんな素晴しいコメントが書いてあったとは全然知らなかった(読めなかった)だけに
このコメントの日本語訳が読めただけで、「この本を買ってよかった」と思ったものでした。


「ホールド・ミー・タイト」

失敗作といってよい。曲全体に対するマッカートニーの考え方にいささか乱れがある。
どのように曲をまとめていくか、はっきりと一貫した態度がないのだ。
さらに、またマッカートニーの痛ましいくらいの調子はずれの歌いぶり。
最初の2,3小節を聴くと耐えがたくなってしまう。



EP盤「オール・マイ・ラヴィング」

EMIの販売関係者はかくのごときヤッツケ仕事的なEPを作った。
「アスク・ミー・ホワイ」と「PSアイ・ラヴ・ユー」はここ18ヶ月あまりの間に3度目の登場という使われ方だった。



(左、1964年のページ)
1964年8月23日ハリウッド・ボウル・コンサートでの演奏直後、ビートルズが顔をぬぐうために用いたタオルの切れ端。
ここに貼付されている切れ端は上記タオルの一部であることを証明します。ジム・スティック

(右、1965年のページ)
シェア・スタジアム開演前の楽屋にて。



UK LP「ヘルプ」

アルバムの出来栄えは悲しいことにビートルズの全アルバム中で最低だった。
薄っぺらで凡庸で本物の積極的なエネルギーがまったくなかった。



US LP「ヘルプ」

サウンド・トラックから7つもの曲をとり(これだけで1面ができてしまう)そこに、カレー食堂のシタール弾きや
明らかにジェームズ・ボンドの映画から影響を受けた下劣な器楽を適当に混ぜ合わせた。
したがって、このアメリカで作られたアルバムはまったく例えようもないくらい貧弱になった。
特に個別的なコメントを加えるに値する作品はひとつもない。
サウンド・トラックの中でよかったといえるのは、せいぜい「恋のアドバイス」ぐらいだろう。





ベイビー・ユーアー・ア・リッチマン

サイケデリックな使い捨て的作品。
滑稽なくらいスピード・アップされたトランペットの伴奏(オブリガード)のみが注目に値する。



EP「マジカル・ミステリー・ツアー」

ビートルズ主演のTVファンタジア「マジカル・ミステリー・ツアー」は失望させる作品だった。
そのファンタジアに使われた曲をもとにして、このいささかくだらない歌のコレクションが作られた。
発売は2枚のEP盤で1セットをなし、しかも24ページの案内書が付いてようやく完全になる異常なものだった。
レコード盤同様、テレビの「マジカル・ミステリー・ツアー」がよかったという人もいなかった。


(左ページの写真)
フランク・ザッパの難解な映画「200モーテルズ」出演のため、ザッパに扮したリンゴ。
しかし、よく見ると双子のようにソックリです。

この映画は1990年代にNHK BSでも放送されましたが、ハッキリ言って訳が分かりません。
おっと、「マジカル・ミステリー・ツアー」も訳が分からないという部分では同じかもしれませんが。



          と、まあこんな具合でかなり手厳しいコメントが多いのですが、
          ビートルズ作品ですらこの調子ですから、ソロ作品は・・・




LP「センチメンタル・ジャーニー」

この作品は瀕死の状態にあるマンボの数々をぶざまに下手くそに歌った、あまりにセンチメンタルな選曲集でしかなかった。



LP「マッカートニー」

マッカートニーが意識的に強調しようとしていた飾り気のない味は
”愚かしいふざけた行為である”というふうに手ひどく誤解されたのだった。
しかし、現在振り返ってみると、このアルバムにはさまざまな魅力がある。



LP「オール・シングス・マスト・パス」

このアルバムの3枚目はジャム・セッションを録音したもので最低限の費用しかかかっていない。
それにもかかわらず、値段は5ポンドを上まわった。多くの人びとが高いと思った。
作品はかなり早い時期から不評を買い始めた。その理由はいろいろあるだろう。
その中でも特に内容がどれも同じようなものばかりであることと、
ハリソンの曲想がいかにももの哀しいものであることによるところが大きいと考えられる。



LP「ジョンの魂」

「アビイ・ロード」以来最も価値あるビートルズ作品であり、
1973年に至るまで他のいかなる作品によっても超えられることはなかった。









「恥知らずの金儲け盤」というページがあることが
この本の趣旨をよく表しています。




AN ILLUSTRATED RECORD(1978年UK版)



こちらは1975年以降の情報を追加して1978年にイギリスで再発行されたものです。
表紙はイラスト。


表紙を開くと「ブッチャー」が現われます。

でも、最初のページなのですから、
もっとキレイなジャケットが用意できたら良かったのに。


今回の改訂版では1977年の「ラヴ・ソングス」までの解説が付け加えられました。




ビートルズ関係の書籍では70年代のファンであれば気になっていた一冊だと思います。

当時の3000円はかなり高価に感じたものでしたが、たしか3,4年後くらいに1500円という安価になった
雑誌広告が掲載されていましたが、在庫処分ということだったのでしょう。

「ビートルズ事典」や「ビートルズ・ディスコグラフィー」、「ビートルズ海賊盤事典」など
それぞれの時代で皆さんの思い出やビートルズ研究に役立った本もたくさんあることと思います。

洋書ではかなりマニアックな研究本まで出ているものの、英語が苦手な私は洋書はほとんど買いません、
でも、こういった洋書の日本語版がたくさん出てくれることに期待したいのですが、
そのためには現在発行されている日本語版の販売実績がないと難しいでしょうね。




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