ここで紹介する2枚のCDはdts CDとして1996年にアメリカで発売されたものです。
dtsは今日では映画のサラウンド音声として広く知られるようになりましたが1996年当時、映画界ではサラウンド音声といえば
ドルビー・デジタルが主流の時代で、登場から日が浅いdtsはまだまだ一般には認知されていない時代だったように思います。
dtsはドルビー・デジタルに比べて音声の圧縮率が低いのでそれだけ高音質での再生が可能になりますが
そんな高音質の利点を生かしてサラウンド音声で聴かせるという新しい試みのCDですが、
サラウンド化のためのフォーマットとしてdtsを選択したようなので音質面では通常のCDとはそれほど変わらないように思います。
残念ながら日本の一般家庭にはdtsデコーダーがほとんど普及していない時代であっただけに
実際には通販で細々と売られただけで一般の店頭にはほとんど並ばなかったようです。
どういう経緯で、このアルバムがサラウンド化されるようになったのかは分かりませんが、
ポールも新しいものには好奇心があったのではないでしょうか。
その後も新しいメディアであったMDでのソフトを発売したのはビートルズ関係では唯一ポールだけです。
なお、dts CDはポールの作品以外にもいくつか発売されています。
2006.12.22
バンド・オン・ザ・ラン
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選曲はCD化では定番となった「愛しのヘレン」を追加した全10曲のアメリカ仕様。 |
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DTS-CDについてのブックレット(三つ折り)解説。 |
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このCDは制作上のミスと思われますが、1曲目の最初の音が1秒ほど欠けて始まります。 その後、この音欠けは訂正盤が出ているのかどうか分かりませんが。 サラウンドの音像配置としてはあえてサラウンド化を強調したようなものでなく、 軽くリア・チャンネルにも音を振り分けた程度です。 |
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(ここで、ちょっと一息・・・) キャピトルからリリースされた通常盤CDの比較 |
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US初版CDのブックレット裏。 |
US再版CDのブックレット裏。 | |||||||||||||||||
US盤CDの初版(ロング・ボックスで売られていたもの)はUK盤のジャケット写真を使ってしまったために 「愛しのヘレン」のクレジットが抜けています。 再版ではクレジット部分のバックを黒く塗りつぶして曲目を訂正。 (ブックレット内側やCD盤面のクレジットも訂正されています。) DTS-CDでは当然、訂正盤のジャケット写真を採用しています。 |
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ヴィーナス・アンド・マース | ||||||||||||||||||
このアルバムは曲と曲がクロスフェードする部分はすべて分離して1曲づつ独立して収録されていますが、 サラウンド化にあたってはクロスフェード部分での編集の煩雑さを避けたのか、曲順はオリジナルとは違って一部変更されています。 通常CDではボーナス・トラックが3曲収録されていましたが、今回はオリジナル通りの選曲です。 |
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通常盤CDの曲目(ボーナス・トラック入り)→ | ||||||||||||||||||
ブックレットは通常のCDと同じデザインで歌詞も掲載されています。 「バンド・オン・ザ・ラン」と同じDTS-CDについての解説ペ−ジもあり。 |
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さて、このアルバムのサラウンド音声ですが、「バンド・オン・ザ・ラン」とはガラリと変わってポップなアルバム内容 そのままという感じのサラウンド化で、エンジニアもいかにも楽しんで作りましたという感じです。 1曲目の「ヴィーナス・アンド・マース」ではポールのボーカルがいきなりリアから流れるなんて予想外の始まりで、 その後、左、右とポールのボーカルがあなたの周りを一回りしてこのアルバムの世界へ引きづり込んでくれます。 ちょっと、やりすぎの感もなくはありませんが元々サラウンドCDとして発売されているものですから これくらいの音作りを初めから期待して買ったファンも多いかもしれません。 曲によっては派手に振り分けられた音のおかげで、各楽器やヴォーカルが明瞭に聞き分けられる部分も多く、 通常のステレオ盤を聴き込んでいるファンであれば、一度は聴いてみるのも面白いかと思います。 |
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オマケ |
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ここで紹介するものは6枚組の海賊盤CDですが、4チャンネルで発売されていたといわれる8トラック・テープから 2チャンネルにダウン・ミックスして収録したというもの(だったと思います)。 このCDセットの売りである4チャンネル・ミックス音声ですが、通常のステレオ・ミックスと大きな違いはなく、 曲によってはわずかな違いが聴けるという程度です。 CDを収納している緑色のボックスは”Q”の文字をうまくアップル・ロゴにデザイン化、 レーベル名も”QUADRAPPLE”と洒落ています。 |
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最後の「クロスロードのテーマ」は未収録です。 |
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ボーナス・ディスクの「007」サントラ盤はポールの1曲だけを収録したものです。
それぞれのアルバム・ジャケットはコーティングされたキレイな仕上がりになっています。
ところで、4チャンネル・レコードで良く知られているのはジョンの「イマジン」で、これは数カ国で発売されましたが、
「イマジン」以外のタイトルが4チャンネルの8トラック・テープとして発売されていたというような事実があったのかは
その写真すら見たことがないので詳しいことはまったく分かりません。
ちなみに日本では「イマジン」の4チャンネル・オープン・リール・テープが発売されていますが
LPが2000円の時代にオープン・テープは5000円でした。