2007.2.16

エルヴィス・プレスリーとビートルズ


もしエルヴィスがいなかったら、ビートルズは存在しなかった。
エルヴィス以前には、何もなかった。(ジョン・レノン)

今回は少しテーマを替えて「キング・オブ・ロックン・ロール」、エルヴィス・プレスリーとビートルズの関連音源を紹介します。



ビートルズの4人にとって、エルヴィスはヒーロー的存在であったと思います。
しかし、ビートルズがエルヴィスのカバーを正式に残したものはありませんし、
エルヴィス自身もビートルズのカバーとしてスタジオ録音で残した曲は「ヘイ・ジュード」1曲のみです。

エルヴィス作品は現在でも毎年のように未発表音源が続々とリリースされているような状況ですが、
それでもライヴ音源として残したものを含めても2007年の時点で、正式発表されたビートルズ・カバーはわずか4曲です。

相当数な曲を録音しているエルヴィスですが(スタジオ録音の)ビートルズ・カバーが1曲というのも不思議な気がしないでもありません。
今後、未発表音源の登場で、あらたなカバーが正式発表される時が来るかもしれませんが、可能性はかなり低そうです。


ビートルズのメンバーの中ではエルヴィスに一番思い入れがあったのはポールかもしれません。
ポールはゲット・バック・セッションの間もエルヴィスの歌い方を真似している場面をたくさん見る(聴く)ことができます。
また、ポールはソロになってからエルヴィスのトリビュート盤に参加したり、ポール自身のアルバムにエルヴィスのカバー曲をいくつか収録しています。




それでは、まず最初に、

ここからはエルヴィスがカバーしたビートルズ・ナンバーを収録したアルバムを紹介します。



エルヴィス・アーロン・プレスリー(4CD)

アナログ盤はLP5枚組みで80年に発売。

「リトル・シスター〜ゲット・バック」
 
  70年8月13日のラスヴェガス公演から。
  「リトル・シスター」という曲を知ったのはカンボジア難民救済コンサートでロバート・プラントが
  歌っていたのを見たときでしたが、エルヴィスの曲だと知ったのはずいぶん後のことです。

「イエスタデイ」 
  69年8月24日のラスヴェガス公演から。



ジ・エッセンシャル・60’S・マスターズT(5CD)

(上のジャケット写真はボックスの中の1枚)


エルヴィス作品では集大成ともいうべきCDボックスが50年代、60年代、70年代とそれぞれの時代に分けて発売されていますが、
こちらはその60年代編のボックスから。

いづれもLPサイズのボックス(輸入盤ではロング・ボックスのサイズもあり)で豪華なブックレットやオマケが付いていますが、
この60年代ボックスの日本盤には大瀧詠一さんの大変分かりやすく、それでいてマニアックで詳しい解説が付いているので、
この解説書だけでも読む価値が十分あります。

60年代編のみアルバム・タイトルの最後に「T」と入っていますが、60年代編「U」は映画のサントラ曲だけを収録したものが
続編という形でCD2枚組みで発売されました。

「ヘイ・ジュード」

   69年にウィルソン・ピケットのカバーでもヒットしましたが、エルヴィスはどちらかというとピケット的というか
   R&Bのスタイルで歌詞もアレンジしています。

   69年1月21日の録音ですが、72年2月発売のアルバム「エルヴィス・ナウ」に収録されるまでお蔵入りしていました。



サスピシャス・マインド(2CD)

こちらは上記で紹介したものと同じ「ヘイ・ジュード」が収録されています。



ジ・エッセンシャル・70’S・マスターズ(5CD)

(上のジャケット写真はボックスの中の1枚)


こちらは60年代ボックスに続く70年代編のボックスから。

「サムシング」
  このボックス・セットで初登場となった70年8月11日、ラスヴェガスのミッドナイト・ショーからのライヴ音源。
  エルヴィスが「ビートルズ・ソング・ブックから」と紹介して始まります。



ジ・オルタネート・アロハ

73年1月12日のリハーサルから。
ドレス・リハーサルとは言ってもチケットを売り出す一般コンサートとまったく同じもので観客の歓声も入っています。。

当時のエルヴィスのライヴでは定番となっていたオープニング・ナンバーの「C・C・ライダー」と「バーニング・ラヴ」に続いて
3曲目で「サムシング」を歌っています。
このことをジョージ自身が知っていたかどうか分かりませんが、知っていたら嬉しかったでしょうね。



アロハ・フロム・ハワイ

73年1月14日、ハワイから全世界に衛星生中継されたライヴから。
3曲目で「サムシング」を歌っています。

ちなみに、ボーナス・トラックの5曲はアメリカのテレビ用にステージ終了後に録られたもので、
映画「ブルー・ハワイ」でお馴染の曲ばかり。

なお、73年当時、このライヴ盤からジュークボックス用に作られた6曲入りEPにも「サムシング」は収録されました。



エルヴィス・オン・ステージ・VOL.2

「イエスタデイ〜ヘイ・ジュード」
 
  69年8月25日のラスヴェガス公演から。
  ただし、ボーカルは70年3月31日にナッシュビルのRCAスタジオでオーバー・ダブされたもの。

オリジナル発売時には「ヘイ・ジュード」はカットされていましたが、
ここで紹介する99年発売のアップグレード版でヘイ・ジュードとのメドレーが復活しました。
メドレーとはいっても実際には「イエスタデイ」が一旦終わってから「ダ・ダ・ダ・・・」と続けて歌っていくだけですが。



エルヴィス・オン・ステージ(3CD)

3枚組みのセットでビートルズ・カバーは次の通り。

CD1枚目 「サムシング」
         70・マスターズ・ボックスと同じ音源(70年8月11日のラスヴェガスでのライヴ)。

CD2枚目 「リトル・シスター〜ゲット・バック」 
         70年8月12日、ラスヴェガスで行われたミッドナイト・ショーから。
         「リトル・シスター」と「ゲット・バック」を交互に歌っています。

CD3枚目 「イエスタデイ」 
         70年7月15日のラスヴェガス・ライヴのためのリハーサル。かなりリラックスして歌っています。
       
       「リトル・シスター〜ゲット・バック」
 
         2枚目に収録されたライヴのリハーサル音源。



以上が2007年時点での公式にリリースされた音源です。(洩れているものもあるかもしれませんが)
ほとんどがラス・ヴェガスでの一連のライヴ・ショーからの録音しか残っていないのが、ちょっと物足りないですね。

ロックン・ロールからゴスペル、カントリー、バラードまで何を歌ってもバツグンに上手いエルヴィスが
本気で歌ったビートルズ・カバーのスタジオ録音曲があれば、絶対聴いてみたいところです。





ビートルズ(及びソロ・メンバー)がカバーしたエルヴィスのオリジナル曲。

ただし、実際には他のアーティストの作品をエルヴィスがカバーしているものもたくさん存在するので
ビートルズの面々がオリジナルを聴いていたのか、それともエルヴィスのカバーを聴いていたのか分かりません。
  
1954 シングル ザッツ・オールライト サン・レコードでのデビュー・シングル
  シングル ブルー・ムーン・オブ・ケンタッキー デビュー・シングルのB面
1955 シングル グッド・ロッキン・トゥナイト(今夜は快調!) 2枚目のシングル
1955 シングル アイ・フォ・ガット・トゥ・リメンバー・トゥ・フォーゲット(忘れじの人) 5枚目のシングルB面
1956 アルバム ブルー・スウェード・シューズ(オリジナルはカール・パーキンス) デビュー・アルバムから
  アルバム アイ・ガット・ア・ウーマン(オリジナルはレイ・チャールズ) デビュー・アルバムから
  アルバム アイム・ゴナ・シット・ライト・ダウン・アンド・クライ・オーバー・ユー(座って泣きたい) デビュー・アルバムから
1956 シングル シェイク・ラトル・アンド・ロール  
  シングル ローディ・ミス・クローディ 上記シングルのB面
1956 シングル ドント・ビー・クルーエル(冷たくしないで) 「ハウンド・ドッグ」のB面
1957 4曲入りEP パーティー  
  シングル オール・シュック・アップ(恋にしびれて)  
  シングル ザッツ・ホエン・ユアー・ハートエイチズ・ビギン(心のうずく時) 上記シングルのB面
1958 シングル アイ・ガット・スタング 「ワン・ナイト」のB面
1960 シングル イッツ・ナウ・オア・ネバー  

ここに挙げたデビュー曲の「ザッツ・オールライト」などを含めて、多くの曲はエルヴィスのオリジナル曲ではありませんが、
エルヴィス作品として一般にご存知の方のほうが多いかと思います。
このあたりの感覚としては「ツイスト・アンド・シャウト」や「プリーズ・ミスター・ポストマン」などがビートルズの
オリジナルだと思っている人が多いようなものでしょうか。


大雑把に調べただけなのでチェック漏れがまだまだあるかと思いますが、やはりビートルズのメンバーにとっても
彼らが10代の時に聴いていた曲が圧倒的に多いのが分かります。




豪華決定版エルヴィス・プレスリー(4LP)

70年8月発売の4枚組みベスト盤。

「冷たくしないで」(リンゴがカバー)
「アイ・ガット・スタング」(ポールがカバー)
「オール・シュック・アップ」

翌71年8月には続編となる「第2集」が発売されましたが、初回プレス分にはエルヴィスが使用した
タオルの切れ端(だったかな?)が付いていたそうです。

余談になりますが、この4枚組みボックスを見ているとビートルズの「赤盤」「青盤」が発売されるきっかけとなった
非合法の4枚組み(2セットで計8枚)はこのエルヴィス盤を真似て作ったような気がします。


こちらは2枚組みCDとして発売された時のもの。

ロング・ボックスに窓を開け、そこから中のゴールドCDが見えるようになっていてオリジナル・アルバムのジャケット・デザインを
うまくCD・ボックスにまとめたセンスはバツグン。

もちろん店頭でのアピール度も高かったので、思わず手にとってそのままレジへ進んだファンも多かったのでは?



その他の関連作品を少しだけ紹介します(収録曲については割愛させていただきました)。






「パーティー」を収録(ポールがカバー)



このCDはエルヴィスがカバーしたオリジナル作品を収録したものですが、
こうやって曲目を見てみるとエルヴィスがオリジナルだと思っていた曲が意外と多いものです。




こちらはカール・パーキンスのCDですが、エルヴィスと同じサン・レコーズのアーティストだったということで紹介します。

こちらも曲目を見ているだけでビートルズ・ファンにはお馴染のものが、いっぱいあります。
しかし、オリジナルを聴いて改めて思うことは
「やっぱりビートルズはオリジナル以上に完全にビートルズの曲としてカバーしている」








続く
































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